[セッションレポート] Amazon.com で培われた技術による小売業システムのマイクロサービス化と顧客体験向上のツボ (AWS-55)
AWS Summit Japan 2024 にて、「Amazon.com で培われた技術による小売業システムのマイクロサービス化と顧客体験向上のツボ」を受講しました。
本レポートでは、セッションで講師の方がお話された内容を、記憶を頼りに多少意訳させていただいて書きます。
アジェンダ
- ユニファイドコマース
- リテールイノベーション
- コンポーザブルコマース
これらがキーワードになっているセッション内容でした。
ユニファイドコマースに至った歴史
シングルチャネル → マルチチャネル → オムニチャネル → ユニファイドコマース
- EC等が始まってマルチチャネルになったが、当初それぞれのチャネルが独立しており連携できてない状態だった。
- オムニチャネルでは、店舗、ECなど、どのチャネルでも共通した顧客体験を提供。
- ユニファイドコマースでは、デジタル世界と実店舗の世界の融合が実現される。
コマースシステムの全体像
- フロントエンド
- EC, SNS, POS...といった消費者との接点
- バックオフィス
- 倉庫、店舗、ERP...
- コマースコア
- フロントエンド、バックオフィスから利用される共通基盤。
- 注文、決済、出荷...
- (コマースコア部分は、バックエンドと呼ぶこともあると思います)
生成 AI によるデジタル体験の向上
Amazon.com のレビュー欄は、単にユーザーの投稿したレビューをそのまま表示するのではなく、 AI でレビューコメントを分析し、重要なところを強調して表示します。
スマートストアテクノロジー
Amazon 社がこれまでに開発したもの。
- Just Walk Out
- Amazon GO
- Dash Cart
- ショッピングカートに商品を入れるとカメラで商品を読み取ってくれる
- Amazon One Enterprise
- 手のひら認証
Amazon One Enterprise
- Amazon One が、最近ついに日本に上陸しました。
- 手のひら認証は、手をかざすだけ。カードを出さなくてよいし、QRコードを出さなくて良い。顧客体験が良いです。
- 精度がとても高いです。99.999999%。
- 手のひらの画像データは端末には残らないので、安全です。
リテールビジョン分析
- EC では顧客による操作を記録して顧客の行動分析ができる。同等のことを店舗でもやりたい。
- 店舗内のカメラ動画からリアルタイムで解析データ(棒人間のような形)を作成して、解析する。これにより、棚から商品を取ったり戻したり、といった行動を把握できる。
デジタルサイネージ
店内のデジタルサイネージに AI を使って状況に応じて動的に商品を表示して、購買喚起できる。 また広告場所として売ることもできる。
コマースシステムフレームワーク
小売事業者としては 1 - 4 の部分は、SaaSなどで調達して、「 5. フロント」の開発に注力したいはず。
コマースシステム革新における挑戦
- コマースシステムの課題として、 POS, EC, モバイルアプリが連動しておらず、統一的な体験を提供できない(オムニチャンネルが実現できていない)。
- EC パッケージもあるが、自社にちょうどいいパッケージは無い。機能が過剰で使いきれなかったり、自社仕様でカスタマイズが必要だったり。
- コマースシステムは大規模なので、容易に刷新できない。ゆえに意思決定に時間がかかる
- フロントを改善したいが、スピーディーにできない。顧客体験を素早く改善できない。
コンポーザブルコマース実現に向けて
マイクロサービスになっていて、豊富な選択肢のサービスがあり、API仕様が標準化されていて、他サービスに切り替えることが容易にできるなら、サービスを組み合わせて使えますね。
MACH アーキテクチャ
- MACH
- M: マイクロサービス
- A: API
- C: クラウドネイティブ
- H: ヘッドレス
- MACH Alliance
- API 仕様を標準化しているとのこと。
- MACH Alliance の小売業界向けのページはこちらのようです
ユースケース実現のステップ
- 必要な機能を識別した上で、一部は対応製品を調達したり、一部はスクラッチ開発するなど、判断していく。
- オーケストレーション
- ユースケースを実現するために、機能を組み合わせて実行する。
- オーケストレーションは AWS Batch でフローを組むことで実現することもできる。
ハイレベルアーキテクチャ
商品検索、商品購入などのシナリオ別 API は、 EC 、モバイル App などの複数のチャネルから利用される。
コンポーザブルコマースがコマースコア機能にアジリティをもたらす
- 複数のフロントチャネルに対する共通基盤(コマースコア)があることで、統一的なショッピング体験が実現できる。
- 単一のECパッケージではなく、機能単位で製品を自由に選択して組み合わせて利用することで、最適な形にできる。
- 部分的に製品を入れ替えることもできる。機能で分かれていて、短期間で導入できる。
- ビジネス差別化に繋がるサービス(フロント部分)に集中できる。顧客体験を素早く改善できる。
感想
Amazon 社が EC や Amazon Go などの物理店舗で取り組んできた成果や、小売業システムにおける課題、今後の取り組みでテーマになること、について的確にまとまっていたセッションでした。
お話された講師の方の説明も明快で分かりやすく、経験豊富な方なのかとお見受けしました。
ECが発展している状況ではありますが、このセッションでは実店舗の重要性が強調されており、実店舗でのイノベーションの話が具体的に示されていたのも印象的でした。
小売業システムにおいて、「コマースコア」という共通基盤が重要であること、それを前提とすることでコンポーザブルコマースが実現できることが語られていました。 「コマースコア」の部分は、現在私自身が担当しているサービスが担える部分であり、この考え方が浸透することで、追い風が吹くといいなと思いながら聞いていました。
また、MACH アライアンスの API 標準化の取り組みについても触れられていました。 インターフェイス仕様を標準化するのは、実現にはハードルが高い取り組みなのではないかと個人的には感じますが、実現できたら大きいインパクトを起こすと思いますので、普及するのか、見守っていきたいと思います。
セッションのレポートは以上です。
prismatix という EC / CRM サービスについて
私はクラスメソッドの自社サービスである、 prismatix という EC / CRM の API サービスのお客様への導入支援を行っており、本セッションを興味深く聞きました。
prismatix というサービスは、本セッションで説明されていた「コマースコア機能」に該当するサービスです。 本セッションの内容に合わせて prismatix をご説明すると、以下のようになります。
- prismatix を共通基盤(コマースコア)とすることで、複数のフロントチャネルで統一的な体験を実現できます。
- prismatix は
MACH
になっています。 AWS 上で構築され、マイクロサービスになっており、必要な機能のみ利用できます。 - prismatix を利用する場合でも、機能単位で他社製品を自由に選択して組み合わせて利用することで、最適な形にできます。
もし、オムニチャネル、ユニファイドコマース、コンポーザブルコマースに取り組みたい、 興味をもった、という方がいらっしゃいましたら、こちら からお問い合わせください。